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紅の調律者

偽島用。

今日のAIVO:7日目

忘れてt(ry

正直なとこ、外回りなので暇です。合成奴隷。まぁこれで当面の装備はどうにかなるだろう。
りっぱーがーりっぱーがー<まだ言ってる
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  1. 2007/06/22(金) 09:15:15|
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前振り:七日目

 許された者にしか開かれぬ扉。天幕の中枢の魔力回路を用いて厳格に閲覧制限を課せられたそれは、アイコンとしては古びた樫を用いた、古風な両開きの扉として表現されている。“真の本部”の無機質な廊下にあって、明らかに異質なそれは一定以上の認証回避権限を持つ者か、もしくは招かれた者にしか視認することすら出来ないように隠蔽されているのだ。
 その扉を、外から人を不快にさせない絶妙のタイミングでノックする者があった。

「やぁ、待っていたよ。入りたまえ。」

「失礼いたします。」

 古風な執事のお仕着せ、片眼鏡と丁寧に撫で付けられた白髪。絵に描いたような初老の執事が、許された者しか足を踏み入れることの出来ない書斎に現れた。

「久し振りだね。忙しいようだから。この件で現れることに関しては、驚きはしないけれど。」

「ご無沙汰しております。」

 丁寧に頭を下げる執事と、それに気を払う様子も見せない部屋の主。だが、天幕の中での序列でいえば、幹部に名を連ねる彼に対して、部屋の主である緋色の魔術師は唯の管理者でしかない。執事の姿をした彼の普段の規範と、誰に対しても同じ姿勢を取り続ける魔術師の、お互いの微妙な均衡でもってこの場の雰囲気が形成されていた。

「まぁ、座ってくれないかな。今の君は客人であって僕の執事ではないのだから。」

 椅子ごとその法衣を翻し、ようやく彼に向き直った部屋の主は客人用に据え置かれたソファを指し示す。一礼すると、執事の衣装を纏った彼は完璧な身のこなしでそこに腰を落ち着けた。

「君がわざわざ来てくれる、というのでお茶も一番良いものを用意したんだよ。無論、君が淹れてくれたものには到底及ばないのだけれど。
 ……懐かしいな、あの薔薇園のマナをふんだんに吸収した、君が淹れてくれたローズティの味が。」

「今、お淹れしましょうか?」

 表情を全く動かさずに問うた執事に、緋色の男が珍しく困ったような苦笑を浮かべた。小さく首を振って彼の申し出を断ると、背後に置いた大きな机から書類の束を取り上げる。

「それではどちらがもてなしているのか分からなくなってしまう。お気に召さないかも知れないが、これで我慢してくれたまえ。」

「お気遣い、感謝いたします。」

 目を伏せ、非の打ち所のない所作で勧められたカップを手に取り一口啜る。どこまでも自然なその所作は、それでも無礼にならぬために絶妙のタイミングで為された行為──つまりは訓練された、そうと感じさせぬ演技の賜物だった。

「さて、本題に入ろう。君が知りたがっている──いや、天幕全体がそう動いている、“彼”のことについてだ。」

 取り上げた書類の束を、二人の間に置かれたカップの横、机の上へと投げ出して無造作に読むように勧める。取り上げてページを繰り始めた執事を見ながら、彼は伝えるべきことを口にし始めた。

「天幕一般での予測通り、彼に付与した“属性”は“虐殺する者”のそれだ。だが、これは僕が創出して付与したものでなく、君も知っての通り始めから世界に存在する役割の内一つだ。つまり、どこかで干渉するおそれがある。
 また、彼に刻印された製造番号を見て分かる通り、まだ彼は試作の段階で十分な発現を及ぼせるとは考えにくい。」

「あの見回りが、最終段階を妨害してしまったとお考えですか?」

 僅かに眉をひそめ問いかける執事。二人だけの舞台は続いている。

「僕はそうは考えたくないのだけれどね。十分に“刷り込み”を行う前に“彼”──つまりColorlessと名付けたものが目覚めてしまったことは認めよう。“彼”に天幕に存在するデータの中から、あそこに有用な全ての情報を入力したところまでは完成した。だが、それを制御するための情動操作が完了していない。」

「本当に、無差別な“虐殺者”として動く、と?」

 頷いた緋色の魔術師は、口の端を自嘲のそれに形作りながら鼻を鳴らした。小さく溜め息を吐き執事を見つめる。

「一応世界に合わせて、目的が同じである、つまりは利用できる者に対しての攻撃は控えるように刷り込んである。だが、天幕の構成員の認証までは済んでいない。もし認証の行われていない者が、“仲間”を確保し終わった“彼”の目の前に、遅れて現れたなら、“彼”はそれを排除対象として認識してしまう。」

 無言で先を促す執事の男に対し、運命調律師は皮肉な笑みを浮かべた。自分の制御しなかったその結果さえもが、自分の手の内の出来事であるかのように、尊大に。

「どちらにしろ、あれが送り込まれた場所に僕はそれ以外の手駒を送ることが出来ない。また、全てを喰らい尽くす役割を帯びているが故に、得たものを還元することもない。
 ……貪欲な獣だよ、つまりは。」

「他の者に、彼を避けるように通達しましょうか?」

 その問いに対して、緋色の男はもう一度拒否の意味で首を振った。まるで、それには及ばないというように。

「得られた戦闘のデータはフィードバックできる。天幕の全ての戦闘データを与えたあれが、どこまで戦えるか調査するのは有意義だ。そもそも素体は戦闘に不慣れな“一般人”のそれ、どこまで与えられたデータに順応して生き延びられるかは興味深い実験だと言える。
 ……無論、君が手を回して鉢合わせを避けることにするならば、僕はそれが機能するよう取り計らおう。まぁないとは思うけれど、“彼”がいきなり発現して単独のままでその運命を実行し始めないとも限らないから、ね。何にしても、僕は最大限の情報をデータベースにフィードバックできるように、しようと考えている。」

「分かりました。会議に提出しておきます。」

 手短に答えて書類を手に、立ち上がる執事。片手を鷹揚に挙げて彼を見送ると魔術師は再び机に向いて何かを書き付け始めた。

「そういえば。」

 扉に手をかけたところで、何かを思い出したかのように振り向いて居住まいを正した執事が付け加える。

「もしお嫌いでなければ、もう一分ほど時間を短くしてみては如何でしょう。香りがより高まります。」

「ありがとう、忙しさにかまけてつい忘れてしまうんだよ。今度試してみることにする。」

 背を向けたままで、喉の奥でころころと笑い声を上げる魔術師の見送りを後に、執事は部屋を後にした。
+中+-中-
+中+    +    +    +    -中-
「さて、今日から忙しいだろうねェ……。」

 差して来た朝日に目を細め、欠伸を一つ。どっこいしょ、と掛け声が聞こえてきそうなほど大儀な様子で身体を起こしたアイヴォリーは大きく伸びをした。
 久々の遺跡外、前にはなかったような、あばら屋と大差ないものであるにはしても宿屋の体裁を取っているものもある。天幕の布のそれではなく、まともに組まれた建物の屋根の下で眠ることができるのはやはりありがたい。代金は外から持ち込んだ銀貨で事足りた。島での生活に必要なものは島の共通通貨として機能している石でしか手に入れられないが、こうした探索に関係しない部分での贅沢には、運さえ良ければ島の外の通貨もこうして使うことが出来る。とはいえ、借りた部屋まで戻らずに食堂で馬鹿騒ぎをしたまま最後には寝入ってしまったのだから世話はない。
 この“島”では、厳格にルールが定められている。遺跡の探索を円滑に行うために、遺跡の外部での戦闘は固く禁じられていた。内部ではそんな制限は存在しないのだが、それはそれで探索者たちの力量バランスが崩れることによって、新たな道が拓けるとでもいうのだろうか。どうでもいい思考を頭の隅に押しやって、アイヴォリーは宿を出た。
 要するに大事なのは、“外”では「襲われない」という事実。
 もしそれを無視して外で問題を起こそうものなら、探索者であることを剥奪されて島から放り出されてしまう。天幕の中に存在する一部の過激派ならばそれですら仕掛けてこないとは限らないのだが、それでも安心感の幅には絶対的な差があるのだった。

「んーッと、パンくずと質素で赤い枝、コイツは全部ぶち込んで溶液に浸した上で加熱処理……白い枝が質素同士でコイツは開封した食料を粉末状に砕いた上で……あァ、メンドクセェ。」

 ケープの中からメモを取り出して手元で繰りながら歩いていたアイヴォリーは、早くもその暗記を放棄した。記憶力が人並み外れて優れているくせに、こういったことになると忍耐の方が音を上げるのはいつものことだ。
 街の外で出来ること。つまりは次の探索への準備。
 街の外で購入できる保存食は、合成することで新しい素材へと変化させることが出来る。その方法は人それぞれだが、同じ組み合わせから得られる素材は同じ。つまり一定の法則があるのだ。それを利用して新しい素材を確保し、戦力を充実させるのは、次の“ダイブ”への大切な準備の一つだった。
 何がどう転んでこうなってしまったのかはともかく、今やルミィの残した合成装置を使ってパーティの合成を引き受けているアイヴォリーにとって、この仕事は決して馬鹿に出来ない。自分の装備は元より、パーティ、ひいては仲間全ての装備に影響するのだ。それを自らの生業とし、研究している者ならばともかく──そう、かつてのハルゼイのように──丸暗記でとりあえずそこから試行錯誤を繰り返しているアイヴォリーにとっては、経験則がものをいうこのシステムは面倒くさい以外の何物でもないらしい。

「第一、ナンでようやく買えるようになったマトモな食料をワザワザ素材にしねェとイケねェんだよ?
 んでオレたちは相変わらずパンくずッて、おかしかねェか?」

 誰に問うているのか、アイヴォリーは一人で愚痴り続けている。やれやれ、といつもの調子で空を仰いだアイヴォリーの視界の隅にふと何かが留まった。
 見知った小さな人影。どこまでもオリエンタルな後姿。けして派手ではなく、地味すぎる着物。見知らぬ三人組に対して何かを訴えかけているように見える。どこか困っているように見えるのは恐らく気のせいではないだろう。

「おゥ、嬢ちゃん。朝早くからナンパたァ精が出るな。」

 連れ合いの少女の頭を軽く叩き一言。相手にはどこかで見覚えがあった。

「なっ?!
 こん人らが練習試合じゃゆうてそんで……。」

「オンナ連れのオトコに声かけるのは関心しねェなァ、おにーさんは。
 アンタらも、三人で一人に対して練習試合はねェだろ。なァ?」

 それまでの状況も、そこに今までいた内の誰一人の話も聞こうとせずに肩を竦めるアイヴォリー。足元が気に入らないのか、何やらブーツの爪先で乾いた砂を弄りながら、他の四人はそっちのけで一人で結論付ける。

「……メンドクセェ、早く終わらそうぜ?」

 告知された練習試合の絵姿で見たのか、とようやくアイヴォリーは納得した。二対三、メイリーがいない分不利だが所詮練習試合だ、と結論付けながら。アイヴォリーは足元の滑りやすい、乾いた砂を蹴った。

~七日目──遊び~
  1. 2007/06/22(金) 09:13:33|
  2. 偽島
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前振り:六日目

 面倒だが少し解説してあげよう。
 “僕たち”があの幻を創ったのだ。“僕”でも、“君”でもなく、“僕たち”が。実体のない唯の幻像は、それを誰がが見ていなければ存在できない。つまり、誰かが描写してやらなければ消えてしまう。
 僕たちは、僕たちの利便性のために彼を創ったのだ。君だけのためでも、僕だけのためでもなく、“僕たち”のために。
 ここでは、“書き換える”ことは誰にも出来ない。唯、解釈し、“書き加える”ことが出来るだけだ。出来ることを放棄するのならば敗北しても仕方あるまい。自らに与えられた権利を行使せよ。
 僕は常に寛容な観察者だ。全てのものを許容し、それを吸収して書き加えてきた。それは今も、これからも変わらない。わざと遊びを残して無限の可能性事を余白に与えさらなる反応を見る。

 全ての“反応”を。


    +    +    +    

 アイヴォリーは渋い顔で自分の天幕の中、状況がまとめられた書類を眺めていた。主に今の彼らで問題となる点は二つ。
 一つ目は言うまでもなく、昨日の夜まで同じ場所にいた彼の相方の敗北だった。今まで単独での行動を全員に強いてきたのにはそれなりの考えがあった。そしてその中で運悪く負ける者がいることも可能性の一つとして覚悟はしていた。だが、実際にそれが唯一無二のものとして大切にする彼の相方の身に振ってわいたとなれば話は別だ。それでなくても、常に理性と感情は相反するものなのだから。

「まァ……仕方ねェよな……。」

 アイヴォリーは小さく溜め息をつくと肩を竦める。そもそも魔術の道を選ぶ者は、自らの体格を犠牲にしなければならない。彼女のように元から体格において他の探索者よりも劣る者であれば、打たれ弱いのはなおさらなのだ。不運が重なれば、昨日のように簡単に倒れることもある。そういった運のなさを補うためのパーティなのだが、今回ばかりはまさに“運が悪かった”としか言いようがないだろう。もっとも、最初から誰かしらは負けることを前提としていたために、後はアイヴォリーの気持ちの問題なのだが。
 そうと分かってはいても、普段なら聞こえてくるはずの姦しい声が聞こえないという単純な事実が、アイヴォリーに地味な一撃として効果を及ぼしていた。

「後は……ヤレヤレ、ツイてねェな。」

 ジョルジュたちが遭遇した、もう一つの大きな問題。だが、これもこの島にいる限りはいつかは出会うはずの脅威。
 人狩り。しかも弓使いを三人という、現在の一般的な、究極の人狩りのスタイル。
 弓の利点は、射程が長いことだ。そして、この島ではある程度得物に習熟すれば近接距離であっても射撃を行える者が多い。接近されても零距離での射撃の技術を身に着けてさえいれば、その不利な点は存在しないに等しい。
 そして何よりも、物理攻撃に弱く、そもそも打たれ弱いために前衛に守られている後衛陣を、その射程で距離の制限を受けずに攻撃することが出来る。魔法を自らの主軸として扱う者は、それに対する対抗方法も心得ている。自分の内に眠る魔力の扱い方を心得ているが故に、魔法による攻撃に対して“抵抗”する術を持っているのだ。そのために、大概にして体格に劣り根本的に打たれ弱い魔法使いたちでも、魔術同士の応酬にはそれなりの耐久性を持っているのだ。
 だが、あくまでもそれは対魔術での話。体格を基とする打たれ強さの面で劣る魔法使いは、物理攻撃に対しての対抗手段は無きに等しい。だからこそ、前衛に守ってもらうのだ。
 それを、守るはずの前衛陣を無視して直接攻撃を加えることの出来る物理武器。それが弓だった。
 大抵のパーティには、その強大な火力を利用するための魔術師が組み込まれている。アイヴォリーたちのパーティではメイリー、の~ねえむたちのパーティにはの~ねえむ本人。そして、ジョルジュたちのパーティにも譲葉がいる。彼女も自らの魔力を武器とする魔法使いたちの例に漏れず、物理攻撃に対しては滅法弱い。

「オイ、ボウズ。準備はデキてるか?」

 天幕から顔を覗かせて、彼らのキャンプの中央で他のメンバーたちと何やら話し込んでいるジョルジュにアイヴォリーは呼びかけた。そのごく小さな、呟きのような呼びかけに、ジョルジュだけが反応してこちらへと顔を向ける。他の面々は誰も気付かない。盗賊たちや暗殺者、野伏が好んで用いる“闇語り”のためだ。一定の範囲より先には全く聞こえない静かな声色や、指向性を持たせてその方向だけに声を届ける技術。これを極めた者は、周囲の者に全く聞かせることなく密談が出来るというが、アイヴォリーのそれはそこまで達者なものではない。だが、それでも話し込んで注意が他へ向いている他のメンバーに聞き取られない程度には熟達したものだった。

「なら後で来い、オレが一緒に“考えて”ヤッからよ。」

 緊張していつもよりも僅かに白いジョルジュの横顔が頷いたのを見て、アイヴォリーはさっさと天幕の垂れ布を引き戻した。あちらの会合が終わるまでに、他にもやっておかなければならないことは山ほどある。アイヴォリーは苦笑を頬に浮かべて裏から自分の天幕を後にした。

    +    +    +    

 人でごった返す遺跡の入り口。ここまで戻ってくるのはそう難しいことではない。魔法陣を介さずとも、遺跡から出ることは出来るのだ。ただし、遺跡の範囲を定めている階段を完全に上りきってしまえば、遺跡から離脱したと“判定”される。島にそう判定されてしまえば一度島の地上部に戻らなければならず、魔法陣による移動以外遺跡の中へと戻る方法は無くなってしまう。
 その境目の部分に、探索者たちがただ“掲示板”と呼ぶスペースがあった。これから魔法陣で遺跡の中へと戻る者、遺跡の中から確認のためにやってきてすぐに探索の続きへと戻る者、その両方が見える範囲に、探索者自身がそれぞれ思い思いに何かを書き付けている。その様子を見にやってきたアイヴォリーの肩を探索者の一人が叩いた。アイヴォリーは彼を知らないのだが、向こうは自分のことを知っているらしい。

「あんたの探索者募集の張り紙な、熱心に読んでる奴がいたぜ?」

 なぜか含み笑いを残して、それだけを告げるとその探索者は去っていった。首を傾げてアイヴォリーが自分の張り紙の方へと目を向ける。の~ねえむが連れて来た探索者の中の一人が脱落したのだ。そのために半端になった人数を合わせるべく、アイヴォリーは今さら誰が反応するのかと疑問を抱きながらも、他のメンバーに従って募集をかけた。その張り紙に誰かが興味を示したらしい。

「…………。」

 張り紙の前には、確かにそれを熱心に見上げている“もの”がいた。

「トリ……かァ?」

 長い槍を器用に傍らに抱え、それを見上げていた“彼”が、アイヴォリーの声に反応して振り向いた。

    +    +    +    

 戻ってきたアイヴォリーがキャンプを覗くと、呼びつけられたジョルジュが手持ち無沙汰にして彼の帰りを待っていた。

「アイヴォリーさん、どこ行ってたんですか!」

「おゥ、戦略会議は終わったのか?」

 あくまでも暢気に、アイヴォリーはジョルジュに答える。時間があるのならば少しでも訓練をして相手に勝つ可能性を見出したいのだろう、ジョルジュは檻の中の虎といった様子でアイヴォリーの天幕の前を行きつ戻りつしていた。

「まァ入りな。」

 言葉少なにジョルジュを促し、天幕の中へと導いたアイヴォリーは置かれた切り株の椅子にジョルジュを座らせる。苛立ちと、そして期待の篭った眼差しでアイヴォリーを見上げるジョルジュに、アイヴォリーは肩を竦めた。

「で、どんな作戦があるんですか?!」

「そうさなァ……。」

 意気込んで尋ねるジョルジュに、相変わらずのらりくらりと答えるアイヴォリー。肩を竦めてアイヴォリーは言った。

「相手はウデ利きの弓使いが三人だ。」

「ええ。」

「しかも、どう考えても人狩りするためにココに入ってきた連中だ。」

「ええっ!」

「今回の戦いは、お前らに、勝ち目は薄い。」

「ええ、ですからっ!!」

 掴み掛からんばかりににじり寄ってくるジョルジュを片手で制し、アイヴォリーは口の端に笑みを浮かべた。普段よりも酷薄に、冷酷に見えるようにして。

「負けてきな。」

「ええええっ?!」

 助言でも何でもない、身も蓋もないアイヴォリーの提案に、思わず叫び声を上げるジョルジュ。それは当然だ。普段からこういうときのために鍛え、腕を磨いているのだから。何か状況を好転させる秘策を、ここぞとばかりにアイヴォリーが語ってくれると思っていたジョルジュは、あっけらかんとそう言い放ったアイヴォリーに食って掛かることも忘れてどこか間の抜けた表情で彼を見つめていた。

「まァ今回はイロイロあッからな。ダレかがウッカリ負けちまうのも“予定”のウチさね。もうメイリーだって負けちまったしな。
 ……ソレよりもボウズ、そんなに肩にチカラ入ってッと勝てるモンも勝てねェぜ?」

 ジョルジュの肩を気軽な調子で叩き、言いたいことはそれで終わったのかアイヴォリーはさっさと天幕を出て行ってしまう。残されたのは、呆然と口を開けたままで固まっているジョルジュ。

「……まァ、どうにかなるさね。どうにか、な?」

 自分の天幕から出てきたアイヴォリーは、天幕に残されたジョルジュのことなど気にもせずに相変わらずいつもの笑みを浮かべていた。

──六日目~“可能性”──

  1. 2007/06/22(金) 09:11:40|
  2. 偽島
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今日のAIVO:6日目

譲葉PT頑張ったっ!カッコよすぎ。

アイヴォリーは隠密を上げたせいでリッパーがダメらしいです。こんなに熟練度上がると思ってなかったんだよなぁ。

まぁダメ元で自分の最速を尽くして、後は使用回数で地道に行くしか。
  1. 2007/06/11(月) 13:46:28|
  2. 今日のAIVO
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前振り:五日目

 暗闇に包まれた部屋の中。小さく穿たれた白い矩形だけが光を投げかけている。だが、その光はあまりに小さく、部屋を照らす役には立っていなかった。静かな足音だけが反響して、そこに人が存在することを物語っていた。
 あまりに広いその部屋では、反響音すらも遠い。部屋の片隅、白い矩形から中央へと向かう足音が途絶え、同時に部屋が微かな明かりで満たされた。無数に立ち並ぶ円柱。その中に、人影。
 円柱が、透明なのだ。そしてその中に、一つの柱に一人ずつ、囚われているかのようにして目を閉じた男が浮かんでいた。白い髪。細身だが均整が取れ、俊敏な動きをするであろう身体。それはまさしく、様々な任務で数多の世界に送り込まれた“象牙色の微風”と呼ばれた彼だった。その男が、天幕の尖兵として知られ、そして唯一天幕を離反して未だ生き続けているその男が、無数に柱の中で眠っていた。
 微かに、ごく微かに柱が光っている。その光でもって部屋が明るくなったのだ。

「さて……。」

 部屋の中央で呟いた男。黒い蓬髪にその瞳を隠し、口元に浮かべた皮肉な笑み。纏う魔術師然とした法衣の色は、血よりも赤い紅だった。
 彼の前には、柱以外に調度も何もないこの部屋の中で、唯一机が設置されていた。傾き、沢山の光る四角をその天面に備えたそれを、机と呼ぶのが果たして相応しいのかどうか。光り輝くその小さな矩形に次々に触れていく男は、僅かに口元の笑みを深くして。一番奥、唯一正面に置かれた、最も太い一本の柱に目をやった。
 その中にも、一人の男が眠っていた。他の無数の柱と同じようにして白い髪。だが、それでいてその眠る男は、他の同じような“彼ら”とは明らかに異なっていた。

“似ていない”のだ。

 目を隠すほどに伸びたその白い髪は、もしもその円柱の中で眠っている間にも男が成長するのなら、自然なのかも知れない。たとえ他の全ての男たちの髪が、まるで測ったかのように均一な長さであるとしても。
 だが、明らかに、“彼”は、“彼ら”の一人ではなかった。

    +    +    +    

「そのまま動くな!」

 はるか後方、白い矩形を遮って一つの人影が現れる。腰溜めに銃らしきものを構えたその人影は、部屋の中央で机を操作する緋色の魔術師に、その狙いを定めていた。

「現在他の素体の起動は認められていない!すぐにそこから離れろ!」

 “見張り”なのだろう。つまり、天幕の生体開発室と呼ばれる一角の中で、不幸にも侵入者を見つけてしまった彼には、名前すら与えられていないということだ。

「いつ、どこで素体を起動するかは、僕が決める。」

 振り返った部屋の中央の魔術師は、あくまでも平静だった。距離があるから、弾は当たることがない。そう考えているのだろうか。それとも、その見張りが部屋の中に向けて発砲出来ないと高を括っているのだろうか。どちらにしても、銃で狙われている人間と、狙いをつけている人間と、その立場は全く逆だった。

「お前が“金色”の恩寵を受けていようが、起動の許可を出せるのは“金色”だけだ!」

 “金色”。虹色天幕の中で、唯一絶対無二の権力を持つ、存在すら謎の主導者の名。
 “紅”。“金色”と妙な親交を持つが、唯の“赤”でしかない、しがない情報管理者の名。

 此処にいる男の呼び名の一つ。

 彼は口元に皮肉な笑みを浮かべ、ゆっくりとそれを口にした。

「ならば、僕が“金色”にそうさせた。それで分かるかな。」

 唯の赤。天幕の謎の一つ。“運命を編纂する役割”。

「そこから離れろ!」

 叫ぶようにして放たれた銃弾は、彼の背後にある、唯一の柱を打ち砕いた。距離があるから、弾は当たることがない。砕かれた透明な柱は辺りにその内容物を撒き散らす。光る水。光る水。光る水。光る水。中に浮かぶ男。
 ゆっくりと、光る粘性の水に運ばれるようにして、柱から押し出されたその男は。ゆっくりと目を開いた。“象牙色の微風”と同じ、深紅の、鮮血色の瞳。
 だが、それでもその男は、“彼”には似ていなかった。口元に浮かべられた酷薄な笑みは、あまりに運命を嘲笑っていて、冷酷すぎた。伸びすぎた髪が、まるでその奥の邪眼を隠すかのようにして、粘性の光る水を滴らせている。
 見張り役の男は普段から持ち歩いている警報用のブザーを押そうとした。そして、自らの右腕が宙に舞っているのを見た。
 いつの間にか、その白髪の男が目の前にいる。どこから持ち出したのか、虹色に煌く長剣を、長剣だけをその身に帯びて。

「“金色”は、僕にそうさせられた。それが、造られたものの役割だからだ。」

 奥で、あまりに独白的に、緋色の魔術師がそう呟いた。身を翻す見張りの男。白髪の男は、それさえも最後まで成し遂げることを許さなかった。彼が最後に見たのは、首に刻まれた、血のように赤い“製造番号”だった。
 見張り役を屠り去った白髪の男が笑みを浮かべる。返り血さえ浴びず、未だに粘性の光る水を髪から滴らせながら。

 その笑い方は。その風貌は。
 部屋の奥で全てを見届けただけの、緋色の魔術師の浮かべるそれと全く同じものだった。

    +    +    +    

緊急通達


全ての虹色天幕団員へ。

“象牙”に対する“金色”の“聖域”は、06030000をもって解除された。

全ての任務に優先して“象牙”の排除、もしくは捕獲を任務として実行すべし。

これは“宝玉”の確保も例外ではない。

“裏切り者”を排除せよ。


これは“金色”からの勅令である。

我等虹色天幕のために。


    +    +    +    

「これでよし、と。」

 伝令兵が、“金色”のサインが入った命令書を全ての地域に送信し終わったのを見て、運命調律者は頷いた。恐る恐るといった様子で、その命令を送信した伝令兵が見返してくる。もう一度、調律者は頷いた。

「良いんだよ。僕がそのように指示したのだから。“金色”がそう命令したんだ。これは間違いなく、“金色”による直々の命令さ。団員だけが使用可能な回線を使って送信した。これを流言蜚語の類や、何かの間違いだとして軽んじて処理する者には、相応の罰が与えられるだろう。“裏切り者”を見逃した者として、ね。」

 だが、今まで“聖域”を維持するように“金色”に交渉してきたと言われる、その男の頬には、いつもの笑みしか浮かんでいなかった。いや、僅かにそこには、普段よりも深い笑みが浮かんでいたのかも知れない。だが、それは伝令兵にははっきりと分かるものでもなかった。

「時代なんだよ。そう、時の流れだ。」

 あくまでも、その笑みは嘲笑で形作られていて、その真意を図らせることをしない。

    +    +    +    

 その頃アイヴォリーは、相変わらず遺跡の中でのんべんだらりとしていた。ダガーを砥ぎ、鎧の整備をしていつも夜が遅い彼は、その反動なのか朝は滅法弱い。戦闘まではいつも持て余した時間を昼寝で浪費している。

「やァ、遺跡の中だッつーのに、日差しの良いコトで……。」

 大きな欠伸を一つ。今のところソロでの探索が方針であるがゆえに、いつもその欠伸を咎め立てするはずの小さな妖精すらその傍らにはいない。だが、それでも何が変わる訳でもなく、彼はいつもと同じように毎日を送っている。すぐ近くに彼女がいて、毎日を安全に過ごし、そして負けたとしてもすぐにフォローにいけることが分かっているからだ。

「ま、もうすぐ合流だしねェ……。」

 合流まで、他のメンバーに劣ることのないように、しっかりと自分を鍛えていなければならない。だから彼は普段と全く変わることのない時間のリズムで過ごしていた。
 風が、アイヴォリーの傍らで巻き起こった。微かに眉を顰め、何やら愚痴を呟きながら身体を起こす。その様子は、歓迎しない来訪者がやってきて、それでも仕方なく応対しなければならないときのそれだった。
 緩やかに渦巻く風に、はらはらと、白と黒の羽毛が舞い上げられていた。

「ヤレヤレ、今日はナンの用だ。オレは忙しいんだケドな?」

 今までごろ寝していたのに忙しいも何もないのだが、アイヴォリーは対流する風の中心に向かってそう語りかけた。舞い散る羽毛の中、その二色の翼を持つ光の球が、僅かに明滅しながら浮いていた。

「キミに伝えることがある……“金色”はキミに対する“聖域”を解除した……ここの団員に対しても同じだ。気をつけてね……」

 ノイズ交じりの音声が、アイヴォリーに届けられる。通信の質が悪いのか。普段ならばもっと余裕をもって、クリアに、明確に伝えたいことを伝えてくる、運命の道化師が使役する電子妖精は、非常に粗雑に、しかも本来の姿でその重要な事柄を告げた。
 そして、ヴィジョンめいたそれは、一瞬で掻き消えた。

「ふむ……。」

 ひっくり返って仰天し、慌てて荷物をまとめてこの島から逃げ出さなければならないような、そんな通告。だが、アイヴォリーはそれを聞いて、小さく呟いただけだった。口の端にいつもの人を食った笑みを浮かべたままで。

「オレにもヤらねェといけねェコトがあるんでな……。ソロソロこの一人アソビにもアキてきたトコだ。
 ヤレるモンなら、ヤッてもらいましょうかッ!」

 あくまでも愉しむように、かつて“象牙”と呼ばれた離反者は、天幕の全てに向かってそう宣言した。

~五日目──展開、始動~

  1. 2007/06/05(火) 12:13:57|
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今日のAIVO:5日目

まぁ順当に勝ちました。というか負ける理由もない。熟練が上がったのはよしとしようか。

ていうかぎゃー。再更新希望。ぎゃー。
  1. 2007/06/03(日) 01:55:06|
  2. 今日のAIVO
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プロフィール

R,E.D.

Author:R,E.D.
crossing daggers,
edge of the wind that coloured BLANC,
"Clear Wind" assassin of assassins,
blooded eyes, ashed hair,

"Betrayer"

his stab likes a ivory colored wind.
He is "Ivory=Wind".

二振りの短剣
“純白”と呼ばれし鎌鼬
“涼風”として恐れられた暗殺者
血の色の瞳、白き髪

“裏切り者”

その一撃、一陣の象牙色の風の如く
即ち、“実験体”。

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